特許と実用新案の違い
特許は、技術的思想の創作のうち高度な発明について与えられる無体財産権です。これに対し、実用新案は、物品の形状、構造又は組合せに関する考案について与えられる無体財産権です。「方法」や「材料」等は、実用新案の保護の対象になりません。
たとえば、部品の製造に関するアイデアの場合でいいますと、部品の製造に用いる機械の配置に関するアイデアならば物品の組合せのアイデアなので実用新案の保護対象ですが、部品の製造手順に関するアイデアならば製造方法のアイデアなので実用新案の保護対象にはなりません。
また、たとえば、スリップしにくいタイヤに関するアイデアの場合でいいますと、タイヤのトレッドパターンに関するアイデアならば物品の形状のアイデアなので実用新案の保護対象ですが、タイヤのゴムの組成に関するアイデアならば材料のアイデアなので実用新案の保護対象にはなりません。
実体審査
特許を取得するには、特許庁の実体審査を経なければなりません。これに対し、実用新案は、無審査で登録されます。
一見、無審査で登録される実用新案権はお得なように見えますが、無審査で登録されるということは、権利が瑕疵を有したまま登録されてしまう可能性が大きいということを意味します。
特許の場合、審査で瑕疵が発見されると拒絶理由が通知され、出願時の明細書の範囲内で意見書・手続補正書により瑕疵が是正されて特許権が設定登録される一方で、実用新案権が瑕疵を有したまま設定登録されると、請求項の削除訂正でしか対応できず、せっかくの良いアイデアが無駄となってしまうおそれがあるということです。
なお、新規性・進歩性の判断基準は特許と実用新案に差はありません。
特許権ではなく、実用新案権を取得しようとお考えのお客様は、このように費用のメリット相応のデメリットがあることを念頭に置く必要があります。
つまり、費用の違いは特許庁における審査料と審査対応手数料によるものです。実用新案の場合には、権利の有効性を担保するために権利化後に実用新案技術評価を請求する必要がありますが、ここで権利の瑕疵が見つかったとしても、権利化後であるため、特許出願の審査対応のような柔軟な補正ができないことがデメリットとなります。
このようなデメリットをある程度解消する手段として、実用新案登録請求の範囲を上位概念から下位概念まで細分化して請求項を作成することにより請求項の削除訂正で対応可能とすることができます。
権利の存続期間
特許権の存続期間は、出願日から20年です。これに対し、実用新案権の存続期間は、出願日から10年です。
権利行使
特許権は実体審査を経ているので、権利行使に際しては善意が推定されます。これに対し、実用新案権を行使する際には、実用新案技術評価書を提示する必要があり、最終的に実用新案登録が無効になった場合には、権利者が善意を立証する必要があります。